【絵本】『噺して しゃるろっと』 ろくろっくび

 

噺してしゃるろっと ろくろっくび3

 



とにもかくにも、木に絡まった自分の首を涼助に戻してもらったら、根が正直なお鈴は、これまでの顛末てんまつを、洗いざらい話しました。
 
お鈴に惚れて言い寄ってきた男達は、お鈴の寝たきりの母親を見て面倒に思ったり、偶然お鈴の妖の姿を見てしまったり、いずれも皆本気ではなく、離れ、他の相手を選んでいたこと。
 
本来であれば怒りは男に向くはずだが、複雑な乙女心とねじ曲がった嫉妬心により、お鈴は、相手の娘達に仕返しをしていたこと。
 
また、お鈴の母親は、血の繋がりはなく、捨てられていた当時赤子の自分を拾って、妖の者と知りながらもこれまで育ててくれていたこと。
 
親孝行、恩返しをしたい気持ちと、結婚して生活が変われば、母との今の関係も難しくなってしまうのではないかという葛藤の中にいたこと、そもそも自分が普通の人ではないこと、などなど、とにかく頭の中が混乱状態であったと、全てを吐き出しながら、お鈴は泣きました。
 
 
それを聞いた涼助は、しばらく考え込んでおりましたが、ふと顔を明るくし、優しい声で言いました。
 
「お鈴さんのことは、訴えないつもりです。
これまでの行いも、私の方で何とかしますので、お鈴さんは騒ぎのことは忘れて、いつも通りお過ごし下さい。」
 
有難い言葉でしたが、それが別れの言葉と受け取ったお鈴。
 
 
何度も謝り、うなだれながら、自分の体の元へと首は帰っていきました。

 
 

噺してしゃるろっと ろくろっくび12

 
 

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