【絵本】『噺して しゃるろっと』 ろくろっくび

 



その後のお鈴は、気味悪がられ、水茶屋の仕事も辞めさせられました。
 
これまでは、お鈴の献身的な看病と、気休め程度の安い薬で、なんとか母の命を繋いでいた状態でありました。
 
少しでも多く稼ぎ、稼いだ金は母の薬代へと消えていく生活でしたが、それも途絶えてしまったことは確実。
 
お鈴は、母親には本当のことを話せず、これまで通り生業なりわいを続けているよう装って、外出しておりました。
 
また、何でもいいから動いていないと心がどうにかなりそうなのと、今まで自分が手を上げてしまった娘達、そして涼助に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
 
 
どこか吹っ切れた様子のお鈴。
 
自分のありのままの姿を隠しもせず、罪滅ぼしではないが、自分の妖としての特性を生かして人助けとなることをし始めました。
 
ある時は、高い木から下りられなくなった猫を救い、またある時は毎晩のように出没していた盗賊を、妖の力を使って驚かし追っ払ったり。
母の薬代とするために、首を伸ばして顔だけ川に潜り、銭拾いまでしたことも多々ありました。
 

 
 

噺してしゃるろっと ろくろっくび13

 
 



周りの人々は、最初はお鈴を気味悪がったものの、自分を犠牲にしてでも周りの為に尽くすその優しい姿に、心を打たれ始めていました。
 
それでも、次の仕事はなかなか決まらず、お鈴親子の生活のための蓄えは、いよいよ底をつき始めました。
 
そんな時、突然涼助がお鈴の前に姿を現しました。
 
最後に別れてから、ひと月は経っていました。
 
 
涼助は、優しく微笑みながら言いました。
 
「お鈴さん、私の嫁さんになってください。」
 
川に潜って銭拾いをしていたお鈴。頭から水をしたたらせながら、何が起こったか分からず、声も出ず、呆然ぼうぜんとしました。
 
「私は、お鈴さんの見目みめより、純粋で親思いの優しい心に惹かれました。
もちろん、悋気りんきで娘さん達に手を出したのはいけなかったが、あれは相手の男達にも問題があった。
そして今、お鈴さんはこうして反省し、良い行いを続けている。その姿に、その純真な心に、私は惚れたのです。
きっと私の両親にも、優しくしてくれることと思います。
あなたと生涯を共にしていきたい。
お鈴さんが妖の者だとしても、私は気にしません。」
 
やっと、母親以外に自分を理解してくれる人が現れたと、お鈴は涙が溢れて溢れて止まりませんでした。
 
 
 
 
それから、お鈴の人生は一変しました。
 
涼助は、実は裕福な薬種問屋やくしゅどんやの跡取り息子。
 
涼助の両親は、二人を祝福し、お鈴が嫁に来てくれたことを喜んでくれました。
 
 
お鈴の母親はというと、評判の良い立派な医者に診てもらい、症状に合ったよく効く薬を飲んだら、寝たきりの状態から外へ働くほど回復しました。お鈴達の住まいの近くに住み、今は早くも孫に会えることを楽しみにしている様子です。
 
 
涼助とお鈴は、手を取り合って、人のためとなる商いを続けました。
 
必要とあらば、お鈴はいつでも首を伸ばして人助けとなることも続けました。
 
首が長~いろくろっくびのお鈴は、皆に愛され、いつまでも長~く幸せに暮らしたということです。
 

 
 

噺してしゃるろっと ろくろっくび14

 
 


お終い.


 
 

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これで私のお話はおしまいです。
 
 
え?他に話はないのかって?
 
それじゃあその時まで、首を長~くして、お待ちください。
 
 

噺してしゃるろっと ろくろっくび15

 
 

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今までとはちょっと違うタイプのお話を作ってみました(*^▽^*)
 
当サイトの看板娘、うさぎの女の子『しゃるろっと』がお話を語り、しかもそのお話は時代物となります。
 
また、「絵本」と言いつつ、昔の言葉や漢字を多めに使っています。
 
読みづらいかもしれませんが、日本語の良さ・面白さを感じれるよう、敢えて多用してみました♪
 
 
私自身、落語を見たり聞いたり…はあまり無いのですが、「寿限無」、「饅頭こわい」、「化け物使い」等々、絵本は好きでよく読みます。
 
今回の私のお話の場合、オチなどなく、ハッピーエンドで終わるというのが私らしいかもしれません(;^ω^)
 
お話を考えるのは大変でしたが、これもまた試行錯誤して、個性を活かしながらまたお話作りにチャレンジしてみたいと思います☆
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました(*^-^*)
 
 

 
 
 
 
 
 
 

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